天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
指輪を取り上げた優一に、海童が近づいてきた。

「牧村先生。この指輪は、どうされるんですか?」

指輪を回収ボックスに入れようとした優一は、海童の質問に、

「放課後まで、職員室に保管しておきます」

「放課後までですか…」

海童は表情を抑えながら、わざとらしく呟くと、

徐に空を見た。

今は、光が眩しいが…昼からは雨が降ると、天気予報がいっていた。

軽く口元を緩めると、海童は一礼し、優一から離れ、

校舎に向かって、歩き出した。


先生や生徒を離れると、海童は我慢できなくなってきた。

「今こそ…転機なり」

海童は、笑った。

そのまま…校舎の裏側にまわり、誰もいないことを確認すると、

天に、両手をかざした。

「我が眷属よ。今日は、宴だ」

海童の全身から、ポタポタと汗が流れ出す。

それは、尋常な量ではない。

まるで、滝のように。

流れ続ける汗は、水溜まりのようになり、

やがて、地面に染みていく。

そして、海童は手のひらを、校舎のコンクリートの壁につけた。

汗が、コンクリートに染みていく。

「我が主!水の女神よ!」

海童は興奮から、歓喜の声を上げた。

「あなた様に、アルテミアの終わりを捧げよう」

天は少し曇り出し…笑みを讃えていた。
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