天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
震えて、少しパニックになっていた明菜が、

男子生徒の声を聞いて、顔を上げた。

怯えた表情が、少し安心に変わった。

「飯田先輩…」

明菜の表情は、明らかに変わった。

嬉しそうだ。

(飯田…)

僕は、明菜の言葉を聞いて、思い出した。

明菜が語る部活の話に、必ず出てくる先輩。

優しくて、かっこいい。

(飯田直樹)


「大丈夫?立てる?」

優しく、明菜に手を貸し、立たせてあげる…

その横顔を、僕はただ…見つめた。

「ありがとうございます」

感動に打ちひしがれているような明菜に、優しく微笑むと、

直樹は、やっと僕に気づき、軽く会釈した。

(なんだ!こいつは!)

僕の心の中の何かが、直樹を気にいらなかった。

「明菜!」

立ち直ったばかりの明菜に、冷たく、

「俺…職員室にいくから」

あまりにつっけんどんな言葉に、明菜は、呼吸を整える間もなく

「ま、ま、待ちなさいよ!あんたに用があるっていってるでしょ!」

「うるさいな!」

喧嘩腰になる僕に、

「何よ!その言い方!」

突っかかてくる明菜。

(最悪だ)

心の中では、今の状況を嘆いていた。
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