天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「待ちなさいよ」

明菜と直樹に、背を向けて、職員室に向かう為、

来た方向へ戻ろうとした僕を、明菜が慌てて、肩を掴んで止めた。

「離せよ!行かなくちゃならないんだよ!」

僕は、激しく肩を動かし、明菜の手を振り解いた。

「そ、そんなに、あんな指輪が大切なの!」

明菜は、僕の態度に少し驚いたが、すぐに気を取り直し、歩き出した僕を追い越して、

両手を広げ、道を塞いだ。

「どけ」

僕は、明菜を睨んだ。

「どかない」

明菜も僕を睨んだ。

「俺は、用があるんだ!お前のわがままに、付き合う暇はない」

普段と違う僕の雰囲気に、心の中では戸惑いながらも、

明菜は、僕から目を逸らさない。


均衡状態になった2人の横を、

直樹が通り過ぎた。

「指輪だったね」

直樹は振り返り、僕達を見た。

「え」

明菜は、振り向いて、通り過ぎた直樹を見る。

直樹は微笑み、

「俺が、貰って来てあげるよ」


「な、何を勝手に!」

僕は、直樹に近付こうとしたけど、

明菜が道を塞いで、通さない。

「お願いします」

明菜の言葉に、直樹は手を上げ、歩き出した。

僕を無視して。
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