天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「雨か…」

直樹と明菜への怒りの為、大して雨を気にせず、

僕は、視線を前に戻すと、歩くスピードを上げた。

今の僕に、周りに注意を向ける余裕はなかったし、

先程まで感じていた胸騒ぎも、忘れていた。

雨は、窓にぶつかっても、流れることはなく、窓にへばりつき、

やがて量が溜まると、アメーバのように、窓を這いはじめた。

ゆっくりと、僕達の後を追うように…。

そして、

さらに、

僕達が、部室が並ぶ校舎に入り、すぐ右横の階段を降りた瞬間、

長い廊下の入り口に、数十人の生徒が、姿を現した。




それは、赤星の教室にいた同級生達だった。

口元をにやけさせ、虚ろでありながら、鋭い目で、廊下の先を見つめながら、

生徒達は歩く。

決して、早くはない速度で。

手に、各々の得物を持って。

ある者は、カッター。

ある者は、鋸…。

ゆっくりと、二十人はいる生徒が、歩いている。

赤星達の後を追って。





廊下の窓の下…。

雨に濡れ…いや、肌から雨を吸収しながら、

海童はいやらしく笑った。

「いよいよ…宴の始まりだ」

海童は、天に両手をかざした。
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