天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「なんの問題もない」

新聞を裏返し、さらに膝を立てくつろぐ美奈子に、

里緒菜は頭を抱え、

「どこに、問題がないんですか!」

思わず叫んだ。

里緒菜も机の上にいた。

なぜか突然、

部室内に水が溢れ出し、膝上よりも上ぐらいまで、水が溜まっていた。

「心配ない」

美奈子は読み終わった新聞を、隣の机の上に投げると、里緒菜に微笑んだ。

「今日は、見せパンだ」

堂々とした態度で、足を広げる。

「そ、そ、そういう問題じゃない!」

真っ赤になって、怒る里緒菜に、

美奈子は肩をすくめ、

「面白みのないやつ…」





里緒菜達は、部室から出れなくなっていた。

「やっぱ…開かないね」

机と机の間をジャンプしながら、窓に向かった香里奈は、どんなに力を込めても、窓やドアが開かないことを確かめた。

勿論、鍵はかかっていない。

「今日は…香里奈が来たというのに…」

里緒菜は、机の上から下を見た。

水というより、ドロッとした液体に近い。

絶対、降りる気になれなかった。

「これは、ファンタジーをやろうとした我々への試練だ」

美奈子は、水面に映る自分の顔に、笑いかけた。
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