天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
顎まで裂けた巨大な口が、天井から、ぶら下がる里緒菜達に迫る。

そして、一番扉近くにいた香里奈に、近づいていく。

「やめてえ!」

今捕まったばかりの明菜以外は、意識を失っている。

「や」

「やめろ!」

僕が叫ぶより前に、誰かが、足音のする方から、飛び出してきた。

物凄い速さで、僕の前に現れると、僕の様子と、部室の中を確認し、

迷うことなく、

香里奈に迫る海童に、体当たりした。

「何?」

思いもよらぬ攻撃に、海童は、床に転んだ。

「飯田先輩!」

明菜が、涙を溜めながらも、喜びの声を上げた。

激しく肩で息をする直樹を、立ち上がりながら、驚いた顔で、海童は見た。

「馬鹿な…。何故だ。我が水に浸かりながら…何故…意識を保てる」

「自分に誓ったんだ!今度は、香里奈を守ると!」

直樹は、拳を握り締めた。

「誓っただとお!人間如きが!」

海童の背中が裂け、巨大な背鰭が現れた。




「お前は馬鹿か?」

3人の女子に抑えられ、さらに海童の水縛で、動けない僕を…

嘲笑うように耳についたピアスから、声が聞こえた。

「人は、自分自身をしっかりと持っていれば、他人に操られたり、縛られることはない」
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