天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
マリーが歩く度に、マグマは凍り付く。

しかし、ネーナの前に来た時、マグマは凍らなくなった。

対峙する2人の隙間…数センチで、氷とマグマがせめぎ合う。

「依り代の世界に、一匹送り込んだらしいわね」

ネーナが一歩足を踏み出すと、氷とマグマの力関係が変わり、氷を押し戻すように、盛り上がり、

マグマが、マリーに向けて飛び散った。

「あら。あなたに言ってなかったかしら」

マリーは一歩も動かず、ただ目を見開いた。

マグマの滴は、まるで時が止まったかのように、

マリーにかかる寸前で止まり、すぐに凍り付くと、足元に転がった。

「あたしは、聞いてないわ」

ネーナの静かな苛立ちに、マリーは呆れたように、ため息をつき、

「単なる余興よ」

肩をすくめた。

「余興?」

眉をひそめたネーナに、マリーは近付いた。

少し空中に浮きながら、マグマの上に立ち、ネーナの耳元で囁いた。

「今のあの子に、女神の力はないわ…それなのに…」

マリーは目だけで、軍勢を見回し、

「大した数ね…」

マリーはネーナに分からないように、口元を緩めた。

「怖いのかしら?」

マリーの言葉の途中で、ネーナの鉤爪が、マリーのいた空間を切り裂いた。

「図星ね」

しかし、マリーは一瞬の内に、空中へと逃げていた。
< 206 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop