天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「あたしは、怖くなんてない!水の女神として、あたし1人で、あの子を殺すわ」

空中で反転すると、蝙蝠の羽が生え、マリーはどこかへ飛び去っていく。

その様子を苦々しく見送ったネーナは、後ろに控える軍勢に向かって、叫んだ。

「隊は解散だ!あたしも、1人で行く!」

「しかし、ネーナ様」

一歩前に出た不動を睨むと、ネーナも空中に飛び上がった。

「命令だ!マリーより先に、あたしが、アルテミアを殺してやる!」

ネーナもまた羽を生やすと、赤い瞳を輝かせ、

マリーの後を追った。

「ネーナ様!」

手を伸ばし、ネーナの後に続こうとする不動を、リンネが止めた。

炎の髪の毛が、不動の左手に絡みついた。

「リンネ!」

凄まじい力で、引っ張られた為、不動は少し体勢を崩す。

「これは、予定調和です。あなたも、わかってるはずでしょ?」

不動は踏ん張ると、リンネの髪を引きちぎろうとする。

しかし、その前に、リンネは髪の毛を解いた。

「我々は、炎の騎士団だぞ」

不動の体が膨れ上がり、鎧からはみ出す。

「これは、魔王の意志です」

リンネは微笑みながら、凄む。

「魔王…」

不動の表情が、明らかに変わった。

その言葉だけで、震え、冷や汗をかき出す。

リンネの笑いが、冷笑に変わる。

「魔王の意志に、従わぬものは…」

不動の周りを、火狼達が囲む。

その数は、数千。

不動は思わず、後ずさった。

「お分かり頂けましたか?」

リンネは、また優しく微笑みかける。

不動はただ…頷いた。
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