天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「何言ってんだよ」

アルテミアの話し方は、まるで…最後みたいだ。


「アルテミアは、人間だよ」

「赤星…」

アルテミアはフッと笑い、

「あたしに何かあっても…あんたは、大丈夫。もとの世界に戻れる」

「え…」

「あたしの姿の時に、あたしがやられてもね」

「何言ってんだ!アルテミアが、やられる訳がないじゃないか!」

僕の叫びに、アルテミアは悲しげに微笑んだ。

「ありがとう。赤星…。だけど、あたしは…あいつらに勝てない。魔神にも、かなわないくらいだからな」

「でも…アルテミアは」

アルテミアは、上空に飛び上がり、足元の抉れた地形を見た。

「あたしは、女神としての力を捨てた…いや、封印した」

「封印?」

アルテミアの言葉の意味が、わからなかった。

「バンパイヤであるあたしは、その姿でいる為には…必ず、人の血を吸わなければならない」

雲一つない青空に、天使の白い2枚の翼を広がり…海となった土地の水面に、影を落とす。

「…吸いたいという衝動を抑えられない。だから、あたしは、人間にモード・チェンジしている」

「アルテミア!」

僕にも感じられる程の凄まじい魔力が、迫ってくることを。

「せめて、人間として…」

アルテミアは、前方を睨み、

「死にたい!」


< 214 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop