天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
あの姿は、見たことがあった。

夢の中…阿鼻叫喚の中、逃げ惑う人々。

血を吸われ、干涸びて死んでいき、老婆のようになった少女。

雷鳴轟く空に、浮かぶ影。

「アルテミア…」

無意識に出た自分の名前に、アルテミアは反応しなかった。

僕の震えは、アルテミアの震えでもあった。

「あ、あれは…あの体は…」

アルテミアの声も震えていた。


上空に浮かび、広げた揚羽蝶のような羽から、キラキラと輝きやがら、星の砂のように美しい霧が降ってきた。

「赤星!結界を張れ!!!」

アルテミアの尋常じゃない叫びに、僕はとっさに炎の結界を張った。それは、ギリギリだった。

「いたぞ!」

先程、僕の病室に押しかけて来た防衛軍のやつらが、壁の向こうから走ってきた。

「捕らえろ」

上官の命令で、僕に襲いかかろうした隊員達は、降ってきた霧に触れた瞬間、瞬く間に燃え上がり、消滅した。

「電子振動…」

アルテミアは、この霧を知っていた。

電磁波の震える雨で、触れた生物を電子レベルで活発に、燃えさせることができた。無差別に…。

それは、生物だけじゃなかった。

建物…地面。あらゆるものが、燃えだした。

「炎の種だ…」

アルテミアは舌打ちをした。
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