天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
サーシャは、ドラゴンキラーを構えながらも、前に立つ轟に躊躇っていた。

(戦場で会ったら、肉親でも殺せ)

それは、轟の教えだった。

この世界は、魔物の住む世界だ。人など…簡単に操られ、蝕まれる。

しかし、サーシャは嬉しかった。

先程の隊員達は…顔に原型を留めていなかったけど、轟だけは…見た目はそのままだった。

「サーシャ…」

轟は、サーシャの左手に光る指輪に気付いた。

「モード・チェンジ…禁呪を使ったか」

轟は眉をひそめ、

「いや…これ程高等な魔術を、お前が使えるはずがない」

サーシャの構えるドラゴンキラーの切っ先が、微かに震えていた。

「ロバートか…」

轟はフッと笑うと、槍を突き出した。

「笑止」

いきなり、無数の槍が、サーシャの目の前に、現れた。

間合いなど関係ない。

「ハッ」

サーシャの目が輝き、すべての槍をかわしたが、

頬に無数の、浅い切り傷が残った。

「よく避けたな。さすがは、解放状態なだけはある」

轟は槍を引くと、大きく息を吸った。

「気風斬」

そのまま、槍を突き出すと、凄まじい風が沸き起こった。

(カマイタチの一種だ)

サーシャは、風に向けて突っ込んだ。

「グラビティ・ソード」
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