天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「く、くそ…」

全身に痛みが走った。

サーシャは、ガラスの破片の上で、転がっていた。

幸い、鎧をつけていたし、ガラスは刺さっていないようだ。

擦り傷と、打ち身。掴まれた腕が、一番痛んだ。

人の力ではない。

サーシャは、カードを取り出し、回復系の魔法を発動させた。

傷は治るが、ダメージを完全に消し去ることはできなかった。

投げ込まれたビルの中は、誰もいない。ショッピングビルのようだが…定休日のようだ。

サーシャの後ろで、ショーケースが割れ、アクセサリーが転がっていた。

「いや…ビルを棄てたか…」

この街は、天空の騎士団の侵攻から、逃げ出す人々が多かった。


壊れたガラスの扉の向こうから、人々の泣き叫ぶ声と、炎が見えた。

「何が起こってる?」

扉へ走ろうとするサーシャの前に、黒い影が立ちはだかる。

逆光で見えなかったが、近づくにつれ、轟であることが確認できた。

「人が死のうが、我々には関係ない」

両手を広げ、サーシャに近づいていく轟に、

サーシャは、ドラゴンキラーを構えた。

「我々は、ブラックサイエンス!人々を守る為に存在する」

「はははははははははははははははーー!」

轟は大笑いしてから、サーシャを見据え、

「人々を守る存在?我ら死人が、何を言うか!!」
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