天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
アルテミアは、痺れている右腕の感覚を確かめながら、足で槍を立てると、左手で掴んだ。

「アルテミア…今のは?」

出来た穴を見上げると、何層もの床や天井の向こうに、太陽が見えたが、先程の蹴りを放った敵はいない。

アルテミアの横を、人々が逃げ惑う。パジャマの人や車椅子の人が、何が起こったのか分からず、ただ逃げ迷う。

「わからない…でも、強い…」

まったく気配がない。

アルテミアは耳をすましたが、逃げる群衆の音しかしない。

「ちょっと!何てことしてくれるんですか!ここは、病院ですよ!」

右手を握ったり、開いたりして、回復を待っているアルテミアに、看護婦が近寄ってきた。

結構年配の方だ。

「ここは、まだ避難していない、一般の方もたくさんいらっしゃるんですよ」

アルテミアに物怖じしないで、注意する看護婦に、少し感心したけど、今はそんな場合じゃない。

「アルテミア」

看護婦の注意を無視して、アルテミアは頷くと、痺れの取れた腕に、トンファータイプに変化させたチェンジ・ザ・ハートを、装着した。

「来る!」

どこからか、わからないが、確実に攻撃してくることに気づいた。

「聞いてるんですか!」

顔を真っ赤にして、怒る看護婦を置き去りにして、アルテミアは後方にジャンプした。
< 283 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop