天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
(目に見えるものが、すべてじゃない)

ティアナの言葉が、アルテミアの頭に何度も響く。

アルテミアキラーの体に、だぶるように黒い影が見えた。

「サーシャ!力を貸して」

アルテミアの魔力が、握る手から剣に流れ込み、サーシャの魂でできた剣が輝く。

キラーの頭上から、振り落とした剣は、キラーの体を擦り抜けていく。

「あ、アルテミアアア!」

ライの絶叫が響いた。ソード・オブ・ソウルは、黒い影だけを切り裂いていく。



アルテミアが切り裂いた雷空牙は、左右にわかれただけで、威力はそのままで、ロバートの張る結界にぶつかった。

「ダメだ…レベルが違う」

結界は止めることなく、消滅した。

そして、ロバートも消滅すると思われた瞬間。

時間にして、一秒もない。
新たな結界が張られた。

覚悟を決めたロバートは、自分が生きていることに、驚いた。

「ロバート!俺達だけじゃ、保たない!」

「早く手伝え!」

ロバートは、声がした後ろを振り返った。

何百人という結界士が、手を差出し、結界を張っていた。皆、先の戦いで傷つき、この町で、療養していたもの達だった。

「みんな…」

ロバートは、思いがけないかつての同僚の登場に驚き、思わず泣きそうになった。

「感傷的になってる場合じゃないぞ」 

「この攻撃は、今までにない威力だ!」

よく見ると、後ろに並んだ結界士達は皆、尋常じゃない怪我をしていることに気付いた。

「パク!お前…」

ロバートは、同期の結界士を見た。

全身包帯だらけで、血がにじんでいた。

「まだ見込みのあるやつは、みんな避難した」

パクは笑い、

「俺達は、助からない。だから」

全員が、カードを取り出した。

「何をする気だ」

結界にヒビが入った為、ロバートも結界を張る。

「ロバート!お前は生きろ!」

「お前達!やめろ」

カードには、リミッターがあった。一般のカードにはない。防衛軍に所属する者だけ配られるカードにある機能。

「さらばだ」


それは、自爆システムだった。



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