天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
限界以上の魔力を引き出す代わりに、自らの命を捧げる最後の魔法。

「パク!」

何百人もの結界士が、バタバタと倒れていく。

すると、結界は輝きを増し、厚さを増していく。

雷空牙の光と、結界の輝きが、同じくらいになった時、辺りは真っ白になり、


やがて、光は弾けた。

空は、普段の晴天より、少し曇っており、風も静かになっていた。

無音の中、アルテミアが、空中から着地した音だけが響いた。

そして、ゆっくりと空中に浮かんでいたアルテミアキラーが、落ちてくる。

地面に激突した音が響いた時、アルテミアの手から、剣は消えていった。

「さよなら…サーシャ」

アルテミアの瞳から、涙が流れた。


ロバートは、その場にへたり込んだ。

「これ程の代償を払わなければ…人は、魔神に勝てないのか」

サーシャ、そして、何百人もの結界の命。

ロバートは、地面をかきむしり、泣き…嗚咽した。



「終わったのか…」

僕は、呟いた。ほっとした気分より、後味が悪かった。

(今回は…アルテミアとの戦いだった)

一瞬、僕の脳裏に、立ちはだかるアルテミアの姿が浮かんだ。


(アルテミア!)

僕の叫びに、アルテミアは悲しく笑った。

(ここまで…来てしまったんだね)

アルテミアと僕しかいない空間。周りは、綺麗な向日葵の花畑だ。

(できれば、こうなりたくなかった)

アルテミアは手の平を、僕に向けた。

対する僕の手には…………ライトニング・ソードが。

(チェンジ・ザ・ハート…お母様)

アルテミアは僕を見つめ、

(赤星。すべてが、もう…過去のこと)


(うおおおっ!)

アルテミアの雷撃を切り裂き、僕はライトニング・ソードをアルテミアの胸元に突き立てた。
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