天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「ふわああっ」

欠伸をした僕は、再び校舎裏を歩いていた。

またかつあげ現場に、遭遇した。

(馬鹿だな)

再び、じっと現場を見ていると、

「何見てんだよ!」

一人の生徒に絡んでいた三人の一人が、僕に向かってくる。

その顔を見た時、プラッシュバックで、血塗れのその男の顔が、浮かんだ。

とっさに浮かんだ殺意と、なるだろう結果を知り、僕はその場から、走り去った。

(駄目だ…いけない)

全力で走る僕は、明菜とすれ違ったが、まったく気付かなかった。

「こうちゃん?」

明菜は、首を捻った。


かつあげ現場から、遠く離れ、確認できない場所まで来て…やっと、僕は足を止めた。

(今のは、何だ…)

自分でもわからない。

だが、興奮していることはわかった。いや、衝動だ。

(君は、人の醜さを知るだろう)

ロバートの言葉が、蘇った。

「違う」

否定するように、僕は呟いた。



「あなたは、間違っていない」

突然、前から声がした。

かつあげ現場のあった校舎とは、斜め向こうにある図書館の入り口。その横の壁に、一人の男子生徒が、本を片手にもたれていた。

「殺せば、よかったんだ」

「え?」

僕は、本を見つめている為に、横顔しか見せない男を凝視した。

男は、本を閉じると、

「殺したとしても、ブルーワールドに逃げたらいいのに」

男は横目で、僕を睨んだ。

「ブルーワールド…」

僕は、その男の言葉がわからなかった。いや、わからなくはないが、この世界であの世界を知っている者は、いないはず。

一瞬、僕の脳裏に、この前の襲撃が浮かんだ。

「まさか…」

僕は呟くように言うと、男と距離をとり、構えた。
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