天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「か…」

明菜の見つめる少し濡れた瞳に、躊躇いながらも、

「関係ないだろ!」

僕は、明菜の手を振りほどいた。

少し心の中が痛んだが、僕は冷たい態度のまま、明菜に背を向けて、歩きだす。

「最近!噂になってる!いろんな人が、夢を見てる!同じ夢を」

いきなり話しだした明菜を無視して、僕は足を止めない。

明菜は、ただ叫ぶ。

「みんな!異世界に行って、戦わされて!」

僕の歩みは、遅くなったが、足を止めない。

「みんな!やられる寸前で、目が覚めるらしいの!だけど…」

明菜の声が、震えていた。

「一部に、勝つ者もいるわ…。あたしは、負けたけど…こうちゃん…」

明菜が泣いていることは、わかっていた。だけど、振り返れない。

「こうちゃん…」

「ゆ、夢なんだろ!単なる!」

僕は、足を止め、振り返らずに叫んだ。


「こうちゃん…だけど、あたし…一度、あの世界に行ったことがあるんだって…だから…」

明菜の声のトーンが、擦れていく。

「明菜…何が言いたいんだ!」

僕は、苛立ちを抱えたまま、振り返った。

そして、僕は絶句した。

「だから、あたしは!世界を結ぶ…道しるべになるらしいの」

悲しく微笑む明菜の体を、廊下の真ん中の空間から、飛び出した巨大な手が、掴んでいた。

「さよなら…こうちゃん」

明菜の頬は、もう涙で濡れていたが…最後の大粒の涙が、流れた。

「明菜!」

僕は叫んだ。そして、全速力で、走った。

すると、巨大な手が出ている空間の向こうから、槍が飛んでくる。

「うおおおっ」

僕の感情に反応して、両手からファイヤクロウが、飛び出す。どうやら、僕と一体化しているようだ。

ファイヤクロウは、槍をすべて切り燃やす。


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