天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「直樹」

呆然として、赤星を見送った直樹のそばまで、美奈子が来た。

「部長…」

「あいつは確か…」

美奈子は、走り去っていく赤星の右手を凝視した。

「沢村さんの幼なじみです」

「そうか…」

美奈子は呟くように言うと、赤星が見えなくなるまで、その背中を見つめた。

赤星を見ていると、脳裏に何かがぼんやりと浮かんできた。

それは、思い出そうとしても、思い出せないもの。忘れようとしても、忘れられないもの……そんな気がした。

美奈子は、心を決めた。

「直樹…。しばらく、あたしが、学校に来なくなっても、心配するなよ」

「え?」

直樹は、美奈子の顔を見た。

美奈子は、ウィンクすると――そんな自分が馬鹿らしく、大笑いしてから、走りだした。

「部長!」

美奈子の足は速く、すぐに道を曲がり、見えなくなった。

「ちょっと待ってください」

後を追おうか、少し悩んだだけで、タイミングが遅れた。さらに、

「ナオくん」

同じく明菜を探している里緒菜が、駈け寄ってきた。

「明菜。見つかった?」

少し息を切らし、汗をかいてることから、里緒菜がかなり真剣に探していることが、わかった。

「あっ…いや、まだ…」

口籠もる直樹に、里緒菜は首を傾げたけど、直樹の何とも言えない…困ったような表情に、里緒菜はこれ以上、きくのをやめた。


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