天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「何事だ」

防衛軍の地下にある安定者の間に、近づくものがいる。

「この感覚は?」

暗闇に包まれた部屋で、空中を遊泳していた五個の椅子が、止まった。

「て、天空の女神!」

五人は一斉に、上を見た。

天井と思われる空間から、埃のようなものが、パラパラと落ちた。

「馬鹿な!ありえぬ」

「ここは、上とは、空間が違うのだぞ」

「穴を掘ったぐらいで、たどり着けるものではないぞ」

軽いパニック状態になる五人と違い――先程から、椅子を動かすことなく、静かに瞑想していた白老の安定者が、ゆっくりと目を開いた。

「驚くことは、あるまい。あやつは、ティアの娘…」


「しかし、長老!最近まで、天空の女神に、空間を破る力はなかったはず」

一番若いと思われる安定者が、長老と呼ばれた白老の安定者の前まで、椅子を動かした。

「時は動いておる」

落ち着いた口調の長老に、若い安定者はキレた。


「冗談じゃないぜ!俺達は、ここが安全で、贅沢な暮らしができるっていうから、安定者をやってやってるんだぜ」

「そうよ」

安定者はつねに、フードを被っているが、五人は椅子を降り、フードをとった。

三十代後半から~四十代後半までの男女。

「戦う為にいるわけじゃないわ」

真っ黒な髪をなびかせて、弾けそうなバストが、女を強調している。

眼鏡を人差し指で上げると、女は言った。

「あんな化け物と、戦うなんて…あたしの体に傷ついたら、どうするのよ」


その言葉に、長老は笑った。

「お主達は、安定者…。五人の力を合わせれば、アルテミアに勝てるかもしれない」


「嫌よ。あたし、もうここから出るわ」

女はブラックカードを出し、テレポートしょうとする。

しかし、テレポートできない。

「え?」

唖然とする女の体が、吹き飛び、部屋の壁に叩き付けられた。

それを見て、四人は長老に顔を向けた。

長老は、四人を見ず、

「お前達に、力を与えたのは、ティアナを殺す為だけだ」
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