天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
アルテミアは髪の毛を引っ掴みながら、小太りの安定者の顔を覗き込んだ。

そして、にこっと微笑んだ。

あまりの美しさに、小太りの安定者の顔が真っ赤になり、思わず顔をそらした。

「気持ち悪い!」

アルテミアは、その照れた表情に、ぞっとして、髪の毛を掴んだまま、近くの壁に向けて、安定者を投げつけた。

ぶちぶちと音がして、毛根から髪が抜けた。

完全に、ハゲになった小太りの安定者に、

「ヅラでも、召喚しやがれ!」

と毒づくと、他の四人を見下ろした。

「てめえらにきく!ティアナ…あたしのお母様を殺したのは、誰だ!」


アルテミアは、アルティメット・モードにより、ティアナの力を受け継ぐこととなったが…それは、力だけではなかった。

記憶も受け継いだのだ。

白い鎧を身につけた瞬間、浮かんだ死の瞬間。

「あたしは、今まで魔王が殺したと思っていたけど…」

アルテミアは、槍の先を五人に向けた。

「お前達なのか?」

静かに、怒りを押さえるアルテミアの瞳が、赤く輝く。

「そ、それは…」

圧倒的な魔力の差に、四人の安定者は動くこともできない。

「こたえろ!」

アルテミアの体が、変わっていく。口元から、鋭い牙が生えてくる。



「ククククク…」

アルテミアの後ろから、含み笑いがした。

アルテミアは驚いて、後ろを振り返った。

誰もいない。闇があるだけだ。

「折角、母が魔力を押さえてくれているのに…これじゃ台無しだな」

声は、闇からする。

「誰だ」

アルテミアの瞳がさらに、赤く輝き、前方の闇を照らした。

すると、白いフードを被った老人の姿が浮かんだ。

(気付かなかった)

アルテミアは心の中で、舌打ちした。

「何者だ」

アルテミアは、素早い動きで、槍を老人に向けて、突き出した。

老人の腹に突き刺さるはずが…チェンジ・ザ・ハートは突き抜けた。まるで、虚空を突いたように。

フードの下にある白髭をたくわえた口だけが笑う。




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