天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「くそ」

アルテミアはそのまま、槍を上に突き上げた。

口を裂き、フードを切り裂いた。

左右に分かれ、落ちるフードから、現れるはずの顔。

それはなかった。

裂けた口だけが髭とともに、笑っていた。

闇が笑っていた。

アルテミアは槍を抜くと、後方に少し下がり、間合いを取った。

「おまえは…」

アルテミアの体に、緊張が走った。

体が強ばる。

そんなアルテミアの様子に、闇に浮かぶ裂けた口は、楽しそうに笑った。

「我が、誰か分かったか?」

口の周りの闇が、凝縮し…さらに暗さを増す。

口は、更に大きくなり、唇は回転し、髭は渦を作る。それは、まるで宇宙にある星雲のようになる。

「ラル!」

アルテミアの雷鳴を纏った槍が、闇に突き刺さる。

しかし、雷鳴は星雲に吸収される。

見えない闇の手が、チェンジ・ザ・ハートを掴んだらしい。 
アルテミアは、凄まじい力で壁に激突し…そのまま、どこにテレポートさせられた。

闇が、上の本部に通達した。

「天空の女神、アルテミアを駆逐せよ」

その指令は、本部中に響き渡った。

「ラル…。我々は、どうなる?」

痛みから、立ち上がり、何とか体勢を整える五人の安定者に、ラルは鼻で笑った。

「好きにしろ。ジャスティンとクラーク以外は、替えがきく」

高笑いしながら、闇より深い闇は…部屋から消えた。

しばらく、静寂に包まれた後、一番若い安定者が、頭をかいた。

「面倒臭くなりそうだぜ」




「心配するな…。もうお前達にすることはない」

五人の後方の壁から、声がした。

一斉に振り返った五人の見たものは…。


「クラーク」

小太りの男が声を荒げた。

「何しに来た?」

若い安定者の言葉に、クラークは肩をすくめ、

「私も一応、安定者なもので…」

クラークは、天井を見上げ、

「これから、起こる出来事を見届けたいと思いまして」

女の安定者は、キレる。

「お前は、安定者と言っても、私達と違う!汚れた存在よ」

クラークは苦笑し、

「まあ…今は静かに見守りましょうよ。この戦いを」
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