天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「先輩…どうして、産んだのですか?人類の最高機関の1人であるあなたが、魔王の子を産んだなんて…。そんなことが公になりば…」

「わかってるわ…ジャスティン。でも、人もあの人も、人間を知らなくてはならないの…。この世界で、一番脆く、不安定な生き物の」

出来上がったばかりの格納庫から突き出した塔の上で、ティアナとジャスティンはいた。

そして、ティアナの腕の中には、まだ生まれたばかりのアルテミアが、すやすやと寝息を立てていた。

ティアナは、アルテミアの髪をそっと撫でた。

「だけど…この子には、何の罪もないのに…生まれたばかりに、苦労させることになるわ」

ティアナの憂いを讃えた横顔を見ていると、ジャスティンはいたたまれなくなってきた。

「先輩!」

思わず叫んだジャスティンに、ティアナは振り向いた。

「このまま…どこかへ…」

ジャスティンの言葉は、ティアナによって止められた。

「ジャスティン。あたしが死んだら、この子をお願いね」

ティアナは、優しく微笑んだ。

「死んだらって!え、縁起でもない!」

血相を変えるジャスティンに、ティアナは吹き出すと、

真っ直ぐにジャスティンを見つめ、

「ありがとう」

と、満面の笑顔を見せた。

塔上で、靡くティアナのブロンドが、いつまでも、ジャスティンの心に淡い思いを残させた。
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