天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「そんなバカな………チッ」

しかし、アルテミアは、すぐに現実を認めた。

この世界では、素直に感じた直感を信じなければいけなかった。

間違っていてもいい。死ななければ。

後悔ができるのは、生きていてからこそだ。だから、認めなくても、認めることにした。

「チェンジ・ザ・ハート!」

アルテミアは、僕の手のなかにあるバスターモードのチェンジ・ザ・ハートを呼んだ。

しかし。

「チェンジ・ザ・ハート!」

何度読んでも、反応がない。

「どうした!」

アルテミアの呼び掛けに、無反応のチェンジ・ザ・ハート。

僕はにやりと笑うと、チェンジ・ザ・ハートをほおり投げた。

それは、決して、渡した訳ではなかった。

槍になったチェンジ・ザ・ハートは、回転して、アルテミアの腹にヒットした。

と同時に、九の字に曲がったアルテミア目がけて、襲い掛かった。

再生した鉤爪が、アルテミアの両耳を狙う。

どうやら、突き刺したいようだ。

(いけない!)

また女の声が、僕の頭の中に響くと、チェンジ・ザ・ハートは、アルテミアから、僕に返ってきた。

爪を突き刺す前に、反射的に僕は、チェンジ・ザ・ハートを右手で受け取った。

すると、チェンジ・ザ・ハートは消え、変わりに指輪が、右手の薬指にはめられた。

指輪が赤く光ると、僕の瞳は、もとに戻った。

「どうなってるんだ?」

僕は、指輪をまじまじと見た。結構大きな赤いルビーのような色をした……指輪。

指輪は、抜こうとしても、抜けなかった。

指輪と格闘していると、頭にまた女の声が響いた。

(この指輪は、抜けません。あなたの中から生まれつつある神獣の力を、セーブしているからです)

「セーブ?」

僕はまじまじと指輪を見つめながら、永年の謎を確かめるべく、話しかけた。

「あなたには、何度も助けて貰っていました。ありがとうございました…」

証拠はなかったが、確信はあった。

僕は一度、口をふさぐと、ゆっくりと口を開いた。

「ティアナさん」
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