天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
物語は、少し前に遡る。





「今から、時を越えるわ」

アルテミアの言葉に、ぼくはぎょっとなった。

「どうして…?」

アルテミアは、父である魔王ライを、唯一殺せる武器ヴァンパイア・キラーを探していた。

数多くの戦いの末、ヴァンパイア・キラーの在処を知っている者を突き止めた。

その者は、アルテミアの母ティアナのかつての同僚であった。

安定者といわれる…法と魔法と、人の番人。

13人いた安定者の1人……時を守る能力を持った者だった。

彼の名は、蘭。

過去へ戻る能力を持ち、それ以外にも、異世界を渡る特殊能力を兼ねそろえていた。

「防衛軍から、第1級特務指令として、アルテミアに依頼があったのさ。軍の一番上かららしいけど…」

ロバートは、指令書を運んできた。

伝令式神を見送りながら、アルテミアに言った。

「ここから、彼は飛んだと思う。形跡は残ってないけど」

ロバートは、腰を下ろし、湖畔の小さな砂浜に、手をかざした。

ここは、僕が生まれた実世界では、琵琶湖といわれているところだ。

アルテミアの目を通して、

今は、意識だけの存在になっている僕でも、広大な湖を確認することができた。


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