天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「砂の泉?」

僕達の誰一人、その言葉を知らなかった。

「時の狭間では、ないのか?」

首を傾げるロバートに、

女はクスクス笑い、

「ここの呼び名なんて、あまり関係ないわ」

スープの入ったお皿を、僕達に手渡しながら、

「狭間に溜まった…砂のようなものよ」

「だけど…」

アルテミアは、スープを一気飲みすると、女が入ってきたドアの向こうを睨んだ。

今、僕らがいる部屋には、窓がなかった。

「やつの感覚を、微かだけど…感じるわ」

睨んだまま、部屋を出ていこうとするアルテミアの後ろ姿を、見つめていて、

僕は、さっきから感じていた違和感の正体に、気付いた。

「ど、どうして…僕の前に、アルテミアがいるんだ!」

僕の叫び声に、足を止め、顔をしかめたアルテミアが、振り返った。

「今頃、気付いたのか」

呆れたように、鼻で笑った。

「この現象は…俺も驚いたよ。多分、この世界には、他にはない力があるんだろ」

腕を組み、手で顎を支えながら悩むロバート。

そんなロバートを見て、女はクスクスと笑った。

「ここには、すべてがあるの。そんなに、難しく考えなくていいわ。但し、すべてを失っても、いるんだけど」


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