天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「今から、出陣ですな…」

僕のそばで、並んで歩く馬上の武将が、自慢げに言った。

「最近…イーランか…何かいう国の兵士が、落ちてきたらしいので…」


ロバートは、一番前を歩く紅にきいた。

「どうして…あんな兵器が…。魔法とか使えないはずじゃ…」

紅は振り返らず、

「意志の問題よ。他力を借りる魔法は、使えないけど、自分の意志を込めていた…前世の身近の物や、自分自身の能力は、具体化しやすいの。でもね」

紅は、隊列から離れると、一番近くにいた日本兵から、銃を取り上げた。

そして、

銃口を、空に向けて、一発…発砲した。

その瞬間、B29の一機が、大爆発を起こした。

「大きくても、意志が弱ければ…駄目なの」

紅は、僕を見た。

「何をする!」

そこにいた武士や兵士が、紅を囲む。

紅は腕を組み、不敵に笑った。

「このアマが!」

武士が、切りかかろうと刀に手をかけた。

「やめておけ」

群集を、すり抜けるように、1人の男が、紅と武士の間に、割って入った。

「ら、蘭丸殿!」

武将達の動きが、止まる。

「お前達では、この人に勝てん」

蘭丸の後ろで、紅は苦笑した。


「蘭丸!」

アルテミアとサーシャは、身構えた。

「久しいな…。いや、君達は、つい最近かな…」

蘭丸は、笑った。

ロバートは、一歩前に出た。

「あなたは、消滅したはずでは…」

蘭丸は、ロバートを見、冷たい視線を送り、

「世界から、追放されただけだ」

しばらく、ロバートと見つめ合うと…背を向け、ゆっくりと歩きだした。

「親方様のところまで、案内しょう」


「みんなも、行きましょうよ」

迷っている僕達に、紅は微笑みかけると、蘭丸の後に続く。

「チッ!」

アルテミアは、舌打ちすると、歩き出す。

続いて、サーシャが息を整えると、後に続く。

ロバートは、蘭丸の背中を冷たく、しばらく見送っていたが、

やがて、無表情のまま歩き出す。

僕は、そんなロバートを訝しげに見ていた。

普段のロバートと、少し違う。

何か…嫌な感覚がしていた。




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