天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
そこは、ジャングルの隙間ともいうべき広場だった。

巨大というわけではないが、三百メートルの広さに、塀が築かれ、学校の校舎程の建物が、ある種堂々とジャングルに建ち、異彩を放っていた。

慌てながら、隊長はカードを塀の入口に設置してあるセキュリティシステムに、差し込んだ。

扉は、静かに開き、中へ飛び込もうとした隊長に、人が倒れこんで来た。

驚きながらも、抱き止めた隊長は、それが基地の職員であることがわかった。

「どうした?何があった!」

倒れてきた職員の体を揺すると、職員は顔を上げた。その表情に、生気はない。

職員は、最後の力を振り絞って、隊長の腕を掴むと、口を動かした。

「に、逃げろ…」

「何があった!」

「バ、バンパイア…」

それが、最後の言葉となった。

職員は、ミイラのように干からびると、隊長の腕の中からすり落ちた。その首筋には、2つの傷痕が…。

「バンパイア…」

呆然としながら、呟いた隊長の目の前に、天使が舞い降りた。

それは、六枚の蝙の羽と、黒い鎧を身に纏い、漆黒の髪に、血よりも赤い瞳。

異様な程の底知れぬ魔力に、恐怖を感じるよりも、人はその美しさに、心奪われ、動けなくなる。

魔性とは、彼女の為にあるのだ。

かつての少女は、狂おしい程の美しさを讃えていた。

それが、女というものなのか。

しかし、彼女には、目の前にいる人間達は、単なる獲物でしかなかった。

彼女の微笑みから、牙がこぼれた。


ここは、彼女の喉満たす場所でしかない。



天空のエトランゼ…第二章

開幕…。
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