天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
ライは、玉座の後ろに向かって、歩きだした。

すると、すぐに壁があるだけなのに、ライの姿が空間から消えた。

そのまま、壁の中…物質の中を落ちていく。何の抵抗もなく、ライは落ちていく。

それは数メートルとも、数百キロとも思われる深さを。

物質がなくなり、ただ闇だけがある場所で、ライは止まった。

何もない場所。

しかし、ライが手をかざすと、少しの暖かさだけが微かに伝わった。

「できれば…このまま、ここにいてほしい…体だけでも」

ライが、触れた空間が広がり、筒状のカプセルを浮かび上がらせる。

ただの闇ではなかった。

その闇は深く、淡く…あらゆるものを包んでいた…。時さえも。

時間をなくした部屋。

ライの力によって、この闇の部屋は時を止められていた。

時がないから、終わることはない。

始まりがあり、終わりがあり…繁栄があり、滅びがあり…若さがあり、老いがあり…生があるから、死がある。

そう…すべては反比例でありながら…つながっている。過去から、未来のように。

「お前がばらまいた種は…私…私達の想像を遥かにこえてしまった」

ライの手のひらから、力が筒内に広がっていく。青白い光を放ちながら。

「願わくは…お前が、人に注いだ優しさと同等の…慈しみを、我らに」

筒状のカプセル内は、ライの電気に呼応し、光りはじめた。




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