天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「撃て!撃て!」

崩壊した魔法防衛軍本部近くに、仮設された西欧基地は、本部が移されたといえ、まだ人類の重要な拠点になっていた。

新たに設置された対空砲や、地下にも張り巡らされた結界は、建物の完成よりも早く準備されていた。

それは、次の襲撃に備えてだった。

しかし、予想より早く、基地は、恐るべき来客を迎えることとなっていた。


「なぜだ…」

雨アラレのように、基地から発射されるミサイルや、弾丸。

幾重にも張られた結界をものともせず、白いフードで顔を隠した老人は、一歩一歩基地へと近づいていく。

ミサイルは、老人を突き抜け、弾丸も通り抜けた。

追尾型のミサイルは、何度も老人の体を突き抜け、やがてミサイル同士でぶつかり、爆発した。

その火花さえも、体を擦り抜けていく。

「化け物…」

砲台にいた兵士が呟いた。


「お前らは、忘れたのか!お前達の主を!」

老人が両手を広げ、結界の前で嘆いた時、

老人の後ろに、誰かがテレポートしてきた。

「あんたのことなんて、知らないわよ」

凄まじい竜巻が、老人を包み、かまいたちが老人のフードとコートを切り裂いた。

テレポートしてきたのは、神流だった。

その横に、松永が…更に、正志が、テレポートしてきた。

「お主らは…」

フードの切れ端から、覗かれたのは…口と髭だけの闇。

「へぇ〜。ほんとに、体がないんだあ」

神流が、楽しそうに笑った。

「何者だ?」

老人は、闇の体を晒しながら、体を反転すると、三人を凝視した。

「新たな安定者ですよ」

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