天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
西園寺は、ゆっくりと胸ポケットから、ブラックカードを取り出した。

それを、アルテミアに差し出すが…アルテミアは受け取らない。

「フン。そんなカード…」

アルテミアの瞳が、また輝く。

「まだお前は、質問に答えていない。なぜ、安定者になれた?」


「そ、それは…」

西園寺の中にも、明確な答えはなかった。

ただクラークが、異世界の人間の力がほしかったとしか…理解していなかった。


魔獣因子…。

西園寺の頭に、唐突に浮かんだその言葉を、アルテミアは読み取った。

「魔獣因子とは、何だ?」

アルテミアの問いに、西園寺は目を見開き、ただアルテミアを見つめた。

「知らぬか…」

アルテミアは少し考え込み、

「魔獣因子…それが、お前が異世界に来た理由だとしたら…」

アルテミアは、にやりと笑った。

「まあ、いい…。お前が、人間達の指導者というならば…」



「!?」

西園寺は驚いた。

アルテミアが、顔を近付けてきたのだ。

アルテミアの顔を間近に見て、顔を赤らめる西園寺に、アルテミアは、フッと笑った。

「残念だけど、キッスではない。お前は…あたしの眷属になってもらうだけ」

笑ったアルテミアの唇の端から、鋭い牙が覗かれた。

(バンパイア…)

西園寺は、抵抗しょうとしたが、体がいうことをきかない。

「心配するな…痛くない」

アルテミアの顔が、西園寺の首筋に近付く。

「赤星にも…こうしていたら…」

牙が、首筋に刺さる寸前に、アルテミアの呟きが、西園寺に聞こえた。

牙が刺さった。

不思議と痛みはなかった。

(俺は…どうなる…)

西園寺は、目をつぶった。





しかし、牙は刺さるとすぐに、抜かれた。

(え?)

驚いて、目を開けた時、西園寺の前に、アルテミアはいなかった。

「どうした!」

体の自由も戻り、西園寺は辺りを伺った。

その瞬間、泉に雷鳴が轟き、凄まじい。電気が走った。

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