天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
ポセイドンの衝撃波を迎え撃つかたちで、アルテミアは女神の一撃を放った。

かまいたちの風と雷鳴の突きが、衝撃波と至近距離でぶつかり…。

「フッ」

ポセイドンは、鼻で笑った。

西園寺は、唾を飲み込んだ。

一瞬、時が止まり…アルテミアの髪が、槍を振るった後、乱れた黒髪が、こぼれ落ちる前に、

全身から、血が吹き出した。

それと同時に、アルテミアの股の下の地面が裂けた。

亀裂は、数十メートルに及んだ。

「馬鹿目」

ポセイドンは、口元に笑みを浮かべた。

アルテミアの体が、肩から股までスライドするように、切れていく。


「あっ」

西園寺は思わず茂みから、飛び出そうとしたが、足が動かなかった。


真っ二つに裂けながら、崩れ落ちていくアルテミアを見て、ポセイドンは声を出して、笑った。

「ハハハハ!女神といっても、所詮人の子!我らに勝てるはずがない!それを、魔王はいちいち、気にし過ぎなのだ!先代と比べて、今の魔王は………!」

ポセイドンは、言葉を止めた。

崩れ落ちたはずの…アルテミアがいないのだ。

「なっ……どこに消えた!」

ポセイドンがキョロキョロと、前方を探していると、

後ろから、声がした。

「この程度か…」

少しがっかりしたような口調に、ポセイドンは唖然とし、振り返った。


そこには、少し肩口から血を流しているアルテミアがいた。

怪我はしているが、真っ二つになる程ではない。

「い、いつのまに!」

アルテミアの方へ体を向け、青竜刀を構えるポセイドンを、

今度は、アルテミアが笑った。

「お前の力…もうわかった」

「ほざけ!」

青竜刀を振るおうとしたが、いきなりポセイドンの目の前まで来たアルテミアは、人差し指と親指で、青竜刀の刃を掴んだ。

ポセイドンが握る刀は、びくともしない。

「き、貴様!」

刀を振るおうと、力を入れ、もがくポセイドンを、

アルテミアは一切、見ない。ただ虚空を見つめていた。


しかし、あまりにもポセイドンがもがく為、アルテミアは唐突に指を離した。

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