天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「何だ?お前は!」

いきなり背後を取られたことより、その者が発する雰囲気に、アルテミアは心の中で、舌打ちした。

(感じる魔力は、あたしより下だ!それなのに…)

能面を被り、全身は白いマントで覆われている…その姿に、底知れぬプレッシャーを感じていた。

まばゆい星空の光が、水面に反射し、その上に浮かぶ女を、祝福するかの如く、女だけを際立ったせていた。

アルテミアの気が乱れ…足が少し水の中に、沈んだ。

そのことに驚き、アルテミアは思わず、六枚の黒き翼を広げ、空中へ浮かび上がった。

能面の女は、少し顔を上げた。

(知っているあたしは…)

アルテミアは、直感的にその女を知っていると思った。

そして、心の奥が勝てないという震えを、アルテミアの全身に伝えた。

「あり得ない!」

ポセイドンと同じ言葉を吐くと、アルテミアは震えを止める為、全身に力を込めると、氷の剣を作り出し、

「うおおおっ!」

雄叫びを上げて、頭上から女に襲い掛かった。


しかし、剣が突き刺さる瞬間、女は飛び上がった。

背面飛びで、星空に照らされながら、空中を舞うその姿に、アルテミアも…そして、西園寺も見惚れてしまうが…。

「チッ!」

アルテミアは、何とかコンマ数秒で我に返り、女の着地予想点に向けて、剣を突き出した。

「ありがとう」

女は微笑みながら、最初から剣があったかのように、アルテミアの剣先に着地した。

固い爪先を立てて。

剣の上に立っているのだから、重みを感じるはずだが…女には、まるで重さを感じなかった。


「まさしく…風」

アルテミアの頭上から、声がした。

はっとなって、上を見たアルテミアの顔が驚きの表情に変わる。

「な…」

絶句するアルテミアに、憐れみの表情を、天に浮かぶ三人が捧げた。

「かつては、母に憧れ…人を夢見…」

「今は、人に絶望し…その目的を失い…」

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