天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「我々ではございません」

バイラは、にやりと笑い、

「我々が主、光の女神」


「もういいかしら?面を取っても」

アルテミアの剣に乗っていた女は、一回転すると、音もなく水面に飛び降りた。

「はっ。かまいません」

バイラの言葉に、女はつけていた能面に、手を伸ばした。

「やっぱり…つけてると、視界が悪いのよ」

能面を外した瞬間、そこからこぼれ落ちたブロンドの髪。

大きな青い瞳が、アルテミアを真っ直ぐに見ていた。

「あたしと同じブロンドだと聞いてけど…あら、黒髪なのね」

小さな口を緩め、微笑むその顔が、

アルテミアの動きを、思考を、時を…すべてを止めた。

「そ、そんな…あり得ない!」

何とか言葉を発した時、アルテミアの両手両足から、鮮血が飛び散った。


「ごめんなさい。降りる時、切っておいたの…これで、あなたは動けない」

女の手にあるのは………

紛れもなく、ライトニングソードだった。


ライトニングソードを、アルテミアに向け、体を包んでいた布を取ると、


そこから現れたのは、白い鎧。

「ホワイトナイト…」

バイラは感慨深気に、呟いた。



かつて、数万という魔王の軍勢の前に、たった1人で立ちふさがる女…。

白き鎧に、ブロンドの髪をなびかせ、凛とした表情で、何の迷いもなく戦う…女。

その女の名は。


「はじめまして、天空の女神アルテミア。あたしの名は」

両手両足から、血を流してながらも、何とか六枚の翼を広げ、水面に浮かぶアルテミアに、ライトニングソードを向けながら、女は微笑みかけた。
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