天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「あたしの名は、レイラ…。光の女神レイラよ」

その言葉に、アルテミアは絶句した。

(そう…)

バイラは、目をつぶった。

ライトニングソードを振るい、戦う戦士は…。

(もういないのだ!)

バイラは、かっと目を開いた。


「そ、そんな、そんな、そんなああっ!」

両手両足の動きを封じられたアルテミアは、パニック状態になりながら、叫んだ。

「魔王!よ、よくもお母様を!」

アルテミアの全身から、電気が放電され…雷の塊になる。

そして、六枚の翼を広げると、レイラに向かって、突進してくる。

「うわあああっ!」

「レイラ様!」

バイラ達は、レイラを守ろうと、アルテミアの前に飛び出そうとした。

しかし、レイラはそれを制した。

「動くな!」

レイラは、ライトニングソードを下ろした。

アルテミアの突進を、少し体を横にするだけで避けた。

「あなたは、まるで台風ね…。何の目的もなく…ただ破壊するだけね」

レイラの後ろで、アルテミアの六枚の翼は、綺麗に切断された。

「台風は…いずれ、消えるのよ。力がなくなると、勝手にね」

突進した勢いのまま、翼を失いながらも、アルテミアの体は、水面を走り、水しぶきを上げながら、西園寺が潜む茂み近くまで、滑って行った。

水面から、土をえぐり、止まったアルテミアの顔は、涙でぐしょぐしょになっていた。


「も、モード・チェンジ…。あたしと変われ…赤…」

何とか立ち上がろうとするアルテミアは、体に力が入らない。

腱を切られ、動かない左手が、アルテミアの目の前にあった。

「ああ…そうか…」

アルテミアの瞳から、新しい涙が一筋流れた。

アルテミアの左手の薬指…そこに指輪はなかった。

< 536 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop