天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「そうでしたよね…師匠」

ロバートの言葉に呼応するかのように、ゆっくりとクラークが、振り向いていく。

その顔に驚きはなく、ただ寂しげに微笑んでいた。


「神流を…やったのか?」

近寄ってくるロバートに、クラークはきいた。

砂嵐はおさまり、灼熱の青空に変わった。

砂漠の天気は、きまぐれだ。

地平線まで続く一面の砂の上に、クラークとロバート、西園寺しかいない。

「いや…」

ロバートはクラークの目の前で止まり、クラークの肩越しに、西園寺を見つめた。

「そうか…」

クラークはそう呟くと、ロバートの向こうに視線を向けた。

「助けにいかないのか?あんたなら、助けられるだろ」

ロバートはちらりと盲目の視線で、クラークが持つ次元刀を見た。

「フッ」

クラークは鼻で笑うと、次元刀を空中に差し込み、空間という鞘にしまった。

「あいつは、もう人間ではない。助けたところで、倒すことになる」

クラークは、ロバートに背を向けると、舞子を抱き上げている西園寺の方へ、歩きだした。

「人間じゃない?」

ロバートは、クラークの背中に向けて、叫んだ。

「それは、あんたもだろ?」

クラークはこたえない。

「何を企んでいる?異世界から、ガキどもを呼び寄せ…挙げ句のはてに、化け物にしているだけか!」



クラークは、足を止めた。

そして、ゆっくりと話しだした。

「お前は、人という種を考えたことがあるか?」

クラークの言葉に、今度はロバートが言葉を止めた。

クラークは振り返り、ロバートの全身を見た。

「力を失い…愛する者も失い…視力さえも…。それに今は、命を削っているのか」

ロバートの右手に装備されたドラゴンキラーは…赤く光っていた。

「そこまで、しなければならない…人とは、一体何だ?」

クラークは、前を向いた。

「俺は、神に思い知らしたいのだよ。人というものをな」

「神だと?」

「そう…」

クラークは、自分の腕をさすり…

「俺が…まだ人間の内に」

クラークは、西園寺を見つめ、

「見極めなければならない…人は、人として…これからも生きられるか…な」
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