天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
そんな不動を、レイはただじっと見つめ、

「あやつが、気にしておるから、試してみたが……」

一度を言葉を切り、

「あの程度の男…あやつはなぜ、気にしておるのだ?」

「それは…」

「あやつが、バンパイアキラーとでも言うのか?」

バンパイアキラーの言葉に、少し動揺を見せた炎の揺らめきに、レイは口元を緩めた。

「ほう…」

レイは感心したように、わざとらしく頷くと、無言の不動の横に、一瞬で移動した。

跪く不動の横に立ち、見下ろしながら、呟くように言った。

「…だとすれば……ククク…」

レイは笑った。

「あやつは、弱くなったのか?」

黒いレーザーのような革の鎧を身に纏い、背中まである白髪に、顔は精悍でありながら、見た目は二十代前半にしか、思えない。

「あやつは、弱くなったのかと!きいておるのだ!」

不動は、頭を下げたままこたえた。

「いえ…ライ様の力は、衰えてなどございません」


「だとしたら!なぜ、あんなガキを気にする!あやつは、魔王なのだぞ!この私を…実の父をだ!こんな地に、幽閉し!それだけではなく、妖精達をも、この地にしか、存在できなくしておる!」

不動の横で、怒りを露にするレイに、不動は終始無表情だ。

「それは、人に魔法を使えなくする為…」

「フン!だとしてもだ!結局、人は、魔法を使っているだろが!」

レイの叫びに、不動は深々とまた、頭を下げ、

少し間をあけると、

「…今回は、わが主…ライの命を伝えに来た、だけでございますれば…」

不動は顔を上げ、レイの顔を見上げ、

「赤星浩一には、手を出すな…」

そう言うと、また頭を下げ、

「それだけで、ございますれば…」

跪いたまま、後ろに下がり、立ち上がると、また頭を下げ…その場から、立ち去ろうとする不動。



「待て!」

レイの低く…唸るような声が、不動を止めた。

レイは、不動の正面に体を向けると、

「あやつは…いや、お前達は、我を舐めておるのか?」

「いえ…。そのようなことは、決して…」

また頭を下げる不動に、レイはゆっくりと近づく。

「もし、我が…この言葉は、きけぬと申したら…どうするつもりだ?」
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