天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
レイの言葉に、不動はこたえない。

「この地に、幽閉されているのはいえ…まだライ以外に、負ける気はせぬわ」

不動は頭を下げたまま、動かない。

「あやつは、一体何を考えおる。精霊達も幽閉し…人の力を奪うと、言っておきながら…」

レイの両手が、赤く輝き出す。

「カードシステムなるものを作った人間の女と結ばれ…あまつさえ、その女の間に子供をつくり…」

レイの手刀が、不動に向けられる。

「そやつは、あろう事か!我らの敵に、なっているというではないか!なぜ、すぐに殺さぬ!あやつには、容易いなはずだ!それとも、何か!あやつは、自分と同じ…」

レイの手刀が、不動に突き刺さる寸前に、どこからか声がした。

「それに関しましては、しばしのご猶予を」

レイの動きが、止まる。

驚いたように、目を見開き…わなわなと全身を震わせた。20代を思わせる顔に、皺が走り…一気に老け込む。

レイの右横に、いつのまにか立っていた。

「お初にお目にかかりまする…我が名は、バイラ…」

バイラは、跪いた。

「バイラ…だと…」

レイの震えは、止まらない。

「人も…裏切った女神も、必ず始末して、ご覧に見せましょう」

「ク」

レイは何とか、震えを止めると、バイラから視線を外した。

バイラは、立ち上がると、レイをじっと見つめ、

「それ故…決して、赤星浩一には、手出しされぬように…それが!」

バイラと、不動はもう一度跪くと、声をそろえて、告げた。

「我らが主!魔王ライのご命令でございます!」

レイは、唇を噛みしめると、しぼりだしたような声で、

「わかった…」

頷いた。


「では…これにて、失礼致します」

2人の騎士団長は、頭を下げながら、広間から消えた。



1人残されたレイは、今度は口惜しさに、体を震わせ、

「ふざけおって!純粋なるバンパイアである我を!馬鹿にしおって!」

レイの手刀が、空を切り裂き…一瞬にして、光が闇に変わった。

「いつまでも、貴様の思い通りになると思うなよ!我を殺さず!この地に幽閉した自分を、後悔するがよいわ!」

闇の中、一層赤く輝く瞳が、不気味に闇を照らしていた。

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