天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
うぐぅ………。

マグマの中、僕は意識を失った。

視界が赤から…闇へと変わる。

何もない闇。




「おいおいおい…炎の魔王ともあろう者が、炎の中で、やられてどうする?」

音もない無音の闇の中で、声がした。

(お前は…誰だ?)

「ククク…」

声は笑った。

「お前は…お前だよ」

(お前?)

「そうだ」

その時、僕は気付いた。

声は聞こえている訳ではなく、自分の中に響いているのだ。

(お前は…)

僕は、目を見開いた。

「そう…俺だ!」

僕の目の前に、僕がいた。

赤き瞳を持つ僕。


「力を解放させろ!力を!魔王の力を!人間なんて、やめちまえ!そうすれば、この世界は、お前のものになる!もといた世界では、不可能だったことができるだ!」

赤き瞳の僕は、嬉しそうに興奮している。

(僕は…)

「何だって、望みが叶う!そうだ!そうだろ!お前が、好きなアルテミアだって、好きにできる!むちゃくちゃにしてやれるんだ!」

(アルテミア…)

僕は呟いた。

「そう!アルテミアだ!アルテミアだけじゃないぜ!どんな女でもだ!明菜ってやつも、みんなみんなだ!」

(明菜…)

「解放しろ?この世界でも、いい子でどうする!壊せ!奪え!犯せ!殺せ!破壊しろ!お前は、心の中で、それらを望んでいるはずだ!」

(…)

「なぜ、力付くで、ものにしない?これ程の力がありながら…馬鹿だぜ?アルテミアがほしいんだろ?」



(アルテミア…)

目をつぶると、アルテミアが浮かぶ。綺麗なブロンドの髪に…笑顔。

(笑顔?)

笑顔じゃない。

最後見たのは、泣き顔だった。



(泣いていた…アルテミアは…)

それを思い出すと、僕の瞳から、涙が溢れた。

「涙?涙だと!魔王が、なぜ涙する必要がある?」


「それは…」

僕は再び、目を見開いた。

そして、赤き瞳の僕を見つめ、

「大切だからだ!」


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