天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「何だ!」

クラークは魔法を使う暇すら、与えられなかった。

剣撃は膜のように、隙間なくクラークを切り付けた。

このようなでたらめで、まっすぐな攻撃をクラークは、受けたことがなかった。

まるで、子供の…何の考えもない攻撃。


だけど、クラークは為す術なく…じりじりと後退していく。



(ティアナ先輩…)

まったくタイプが違うが…クラークは、ティアナを思い出していた。

彼女は、ほとんど魔法を使わず、剣だけで魔王まで辿り着いた…唯一の存在だ。

クラークは、そんな彼女の背中しか、記憶に残っていない。

後輩のクラークとジャスティンを守りながら、常に敵の前線にいた…勇者。

そんな彼女が、魔王と結ばれ…子供まで、つくったことは、クラークにとって裏切り行為だった。

例え…それが、この世界で人が生きる術だとしても…。


結局、ティアナは死に…娘のアルテミアは、不完全な存在になってしまった。


(赤星浩一…)


クラークは、ライトニングソードに切られながら、赤星を凝視した。

(彼はなぜ…この世界に来た…いや…)

トゲが削られていく。

(なぜ?この世界で強くなれる)

生き残る為…などではない。

すべての人を救うなどという…自惚れなどでもない。

ごく普通の思いだ。

愛する者を守りたい。


それこそが…基本である。

(それこそが、人!)

個の単位では、人は無力だ。

だからといって、群れれば、強くなるわけがない。

そばにいる…愛する人を守る。

自分よりも。


そう思い…そう行動する者こそ……

人なのだ。

個で強い魔神や、弱いから群れるものではない。

守りたいと思い…戦い。

お互いを支え合う。

生きる為より、愛する者を守る為。


(それが…私が思う人…)

その思いの集まりが、人の社会なのだ。




「うわあああああ」

僕は、ライトニングソードをクラークの心臓に突き刺す。


(そう…お前は人だ!)

クラークの口から、鮮血が吹き出した。



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