天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「そんな強い…アルテミアが、泣いてるだ…ずっと……。だから、僕はもう一度、アルテミアに笑ってほしいんだ…今は、それが…一番」

明菜は、ぎゅと僕の頭を抱き…泣いていた。

「この世界の人達を救え…とか言われたけど……まだそこまでの実感が、ないんだ…。アルテミア1人…助けられないのに…こんなに弱いのに…。誰も守れないのに…」


「そんなことないよ…あたしを、守ってくれたよ」


明菜の言葉が、嬉しかった。

「…ありがとう…」


明菜は、僕を抱きしめながら、そっと自分の涙を拭った。

「こうちゃんは……自分を卑下し過ぎなんだから!もっと自信を持って!」

「明菜…」

「強いよ!ほんと強いよ……いつも、いつもあたしを助けてくれた……。ありがとうは、こっちの台詞だよ」

明菜はゆっくりと、僕の頭を離すと、すぐに立ち上がり、僕に背を向けた。

顔を見せずに、

「よくわからないけど…こうちゃんなら、みんなできるよ。ただ無理せずに、一つ一つやっていけばいいの!1人1人…守っていけば、あたしのようにね」


明菜は、ゆっくりと歩き出した。

「じゃあ…行くね!こうちゃん」

「明菜…」

立ち上がろうとする僕を、明菜は制した。

「いいよ!来なくても」

明菜は、くるりと回転し、僕に顔を向けた。

満面の笑顔を向け、

「頑張って!こうちゃん」

すぐに前を向いた。

「いつでも、世界の向こうで応援してるから!」

明菜は、スキップするように駆け出した。

もうこれ以上…強がりは保てないから。

「じゃあね!こうちゃん!ありがとう!」

一度だけ足を止め、

「またね…」

一言だけ呟くと…明菜は、光の道を走り…消えていった。


明菜が通ると、光の道はなくなり……ただの空洞へと戻った。



「明菜…」

僕の瞳からも、涙が流れた。

明菜の優しさと、温もりだけが、しばらく…僕の体に残り……

僕を癒してくれていた。

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