天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「来たか」

その様子を、石の牢獄の上で見下ろしていたレイは、ほくそ笑んだ。

上空に浮かぶ分厚い雲も、すぐ上にある。


「力を失った…ただの人の身で、どこまでできるか…。見ものだな?フレア」

レイが振り返った…玉座の間に、鳥かごに入れられたフレアがいた。

全身を包んでいる炎も、消えそうだ。

力が衰えながらも、フレアはじっと、レイを睨み続けていた。

「フッ…気丈な女よ」

レイはマントを翻すと、ゆっくりとフレアに近づき、

「ライにして…最高傑作とも、言わしめた…炎の魔神。姉のリンネと、妹のフレア。姉は、激情の業火…妹は、蛍火……といわれていたが…」

レイは膝を曲げ、顔を檻に近付けると、にやりと笑い、

「やはり…炎の女…触ると火傷しそうだ……ハハハ!」

立ち上がりながら、大笑いし、檻から離れた。

「おのが、炎が燃え尽きるまで、ここにいるがよい」

レイは、玉座の間から煙のように消えた。


フレアは、一言も発さず、檻の中から見える灰色の空を、ただ見つめ続けた。

その空の下で、戦っているだろうと思われる赤星のことを心配しながら。





「憐れな子…」

レイが去った玉座の間に、灯りが灯った。

それは、微かな蝋燭の揺れのようなものだったが…すぐに、人の形をとった。

フレアは、その気配にはっとして、炎を凝視した。

「あなたは、もともと…戦闘向きではない。戦闘タイプは、あたしの方なのに」

「姉さん…」


檻の前に立つ…炎の騎士団長、リンネ。

リンネはか細い腕を、檻の隙間から差し入れた。手の平が、フレアに触れた。

「昔は、ひんやりして冷たかったのに……今は、こんなに暖かい」

リンネは、悲しげに微笑んだ。

「これは……あたし達には、本当は生まれない…気持ち」

リンネは、フレアの目を見て、

「私達が、抱いてはいけないもの……!」

リンネの表情が変わる。それと同時に、フレアの頬から煙が発生した。

しかし、フレアは視線を逸らさない。

リンネはすぐに、檻から腕を抜いた。


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