天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
見つめ合う姉妹。

冷たい石造の部屋で、無言の二人だけが、熱を帯びていた。


やがて、リンネはゆっくりと背中を向けた。

「別に…もういいわ」

リンネの炎が、鎮火していく。

「姉さん…」

「ここで、燃え尽きるがいい」

リンネの体から、炎が消えていくごとに、闇に同化していく。

「だけど…」

完全に消える前に、リンネは振り返った。

「あんたの愛する男は、ここまでたどり着けない。途中で、死ぬわ…。御愁傷様」

そう言うと、笑いながら、リンネは玉座の間から、消えた。


1人残ったフレアは、鉄格子を掴み、溶かして、脱出しょうとしたが…

何度やっても、無駄だった。

「赤星様…」

赤星といる時は、できるかぎり、言葉を発するのは、やめていた。

恥ずかしいのもあったが…この人とは、すぐに離れる運命だともわかっていた。

この地にいるのは、バンパイアキラーの意味を知る為。

それは、アルテミアの為。

赤星の口から、ちゃんと聞いた訳ではないが、フレアにはわかっていた。

ごくたまに、口にするアルテミアに関しての話…それを話す時の…微かな躊躇いと恥じらいが、今の自分の気持ちに似ていた。


魔物である自分が、人間である赤星を好きになるなんて…それだけで、あり得なかった。

フレアは、玉座の間を見渡し、改めて、決意を新たにした。

ここは、目的の地にして、もともと赤星とは、最後になる場所だった。

一緒に旅を続ける訳には、いかなかった。


今、力を失った赤星にできること。

リンネは、自分が炎の魔神であることに、喜んだ。

なぜなら、赤星も同じ炎の属性だからだ。

フレアの気持ちは決まった。

あとは、赤星がこの城までたどり着けるかだ。

だけど、心配していなかった。


(あの人は来る)

フレアは、確信していた。
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