天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
あからさまに、アルテミアを挑発するロバートに、残された時間はなかった。

力を得る為に、払い続けた対価は、命そのものだった。

殺気を放ちながら、ロバートは心の中では、誰よりも暖かくアルテミアを見つめていた。

(ブロンドの女神といわれた…女が…)

今は、真っ黒な髪に、絶望をたたえた瞳……の奥は、泣いてるだろう。何一つ信じられなくなったアルテミアに、ロバートは教えたかった。

1人ではないと……。

そして、彼女が今は…守るべきではないと思っている人のぬくもりと…脆さと弱さ。

人はあまりにも、脆く弱いから、過ちを犯す。

それらすべてを、許せとはいわない。ただ知ってほしい…人の悲しさを。

(そんな人を助けることができるものは…)

希望である。そして、支えてくれる仲間である。

(魔に支配された世界で、人々に希望を与えられるのは…アルテミア!君と、赤星くんしかいないんだ)



ロバートは、ドラゴンキラーを縦に構えながら、ブラックカードを解放状態にした。

今のアルテミアに一撃でも与える為には、ロバートのレベルでは足りない。無限に魔力を使えるブラックカードと…後は……。

(我が命!)

ロバートは、ゆっくりとドラゴンキラーを突き出した。

目の前に、アルテミアの放つ雷撃が近づいてくる。

目が見えないからではなく、なぜか普通に、恐怖を感じなかった。

(この一撃に、人の願いを込めて!)

ロバートは、前に突進した。

「ソード・オブ・ソウル!」

この世界の剣士にのみ伝わる技。自分の肉体を、魂を刃を化し、たった一度だけ振るうことのできる…最後の一撃。

恋人サーシャが、魔神サラに使ったように、

ロバートは、自分のすべてを刃にのせた。

雷撃の輝きの中、消滅していくロバートの体は、アルテミアの攻撃で消えていくのではない。

「うおおおっ!」

足が…胴体が…胸が…顔が消えていく。ただ突き出したドラゴンキラーだけが、輝きを増し、雷撃の中で突き抜けていく。

装備した腕さえ、消えた時、

ドラゴンキラーは、アルテミアの肩を突き刺していた。
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