天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
Dig
日本列島の最果ての地……実世界では、北海道といわれる土地は、人のものではなかった。

魔界に面している為に、そこは、人と魔物がせめぎ合う戦争地帯だった。



「魔王の配下の者から、再三の申し出がございますが…」

一面の雪景色の中、煉瓦のようなものでつくられた建物内で、宴会を続けている一つ目の妖怪に、狐の顔をした魔物が、催促状を見せた。

渋々受け取った一つ目は、内容を把握すると、催促状で鼻をかんで、捨てた。

「何が、作戦に参加しろだ!俺達は、魔王の家来ではないぞ!北の地で、勇者にも恐れられる雪原入道とは、俺のことよ!」

胡坐をかきながら、盃に注いだ酒をぐぃっと飲み干すと、雪原入道は、口元を着ている袴に似た着物の袖で、拭った。


「しかし…魔王の命令を無視することは…」

心配そうな狐に、雪原入道は酒臭い息を吹き掛け、

「捨て置け!」

ただ一言そう言った。


「お頭!」

雪原入道の部屋に、もう一匹の狐が入ってくる。

「今日の獲物が、入ってきました」

「そうか!……で、どうなんだ?」

入道は、入ってきた狐に体を向けた。

「それが…」

「それが?」

少し間をあけて、狐はこたえた。

「ものすごい上玉がいます!」


満面の笑顔になる狐に、頷きながら、入道は空の盃を、報告を述べた狐に無言で、差し出す。

「まったく…魔王の配下のやつらは、わからん!人間を殺すか…食うしかしない!もっとよい… 楽しみ方があるのになあ」

にやける入道の前に、捕らえられた人間の女が、連れてこられた。

入道は、その女を見て、唾を飲み込んだ。

「こ、これは…」

健康的な褐色の肌に、大きな瞳。北海道にいながら、少し薄着の肌から、引き締まった体が確認できた。


「珍しい!この辺にいる人間とは、種類が違うな」

女は、入道の前で、怯えた演技をした。

演技。

そう演技なのだ。

入道達に囚われた女の名は、ジェシカ・ベイカー。

防衛軍の新たなる力。




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