天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
きのこ雲が立ち上る空に飛び立ったディグは、真っすぐに飛来するアルテミアに向かって、飛んでいく。

凄まじいGが、かかっているはずだが…ジェシカには何も感じない。

体を包む結界が、あらゆる衝撃から、ジェシカを守っていた。

が、

ジェシカの瞳に浮かぶ…殺の文字が無数に飛び回り、ジェシカの精神に、苦痛を与えていた。

「こいつ…言うことをきかない!」




ディグの暴走に、作戦指令室はパニックに陥っていた。

「駄目です!外部からのアクセスを、まったく受付ません!」

オペレーターの悲痛な声に、マリアは肩をすくめた。

「お手上げね」


「どうなっているんだ?」

西園寺は、モニターを睨み、ディグを示す黒い点と、アルテミアを示す赤い点の動きに、舌打ちした。

「多分…」

マリアはこめかみを押さえ、マッサージしながら、

「ブラックカードの本能ね」

「ブラックカードの本能?」

マリアは、ため息をつき、

「もともとカードを使うには、ポイント…つまり消費する魔力が必要。集めるポイントより、使う魔力が多ければ、魔力を使うことができない。だから、みんなは魔物を、少ないポイントで倒し、ポイントを集める…それが、この世界の摂理」

「しかし…それは、カードを使う者の使命であるが、カード自体に、意志はないはずだ」

西園寺は、自分が持つブラックカードを見つめた。

「わからないわ…。だけど…あの子が、異様な興奮状態であるのは、確かよ」

マリアは、モニター上のディグを示す黒い点を見つめ、

「まるで…目標の者を倒せば…ポイントがたくさん集まるのが、わかってるみたいに……はしゃいでる」


「クッ」

西園寺は、ブラックカードを握り締めると、指令室から出ていこうとした。

「どこにいかれるおつもりです。司令代行」

マリアは、西園寺を見ずに、止めた。

西園寺は足を止めたが、言葉にできない。


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