天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「魔王レイ様が…お亡くなりになられました」

冷静なバイラの報告に、玉座に座るライは、ただ目をつぶり、一言だけ発した。

「そうか…」


ライの傍らに立つレイラは、ちらっとライの横顔を見た。

無表情で、何を考えているかは、わからないが…悲しんでいる様子はない。

寧ろ、どこか安堵しているように、レイラには感じられた。

「王よ!これは、一大事ですぞ!魔王レイと言えば、先代の王!まがいなりにも、王だった者を倒すとは……赤星浩一を野ばらしには、できませぬぞ」

側近の蛙男の慌てぶりは、尋常ではない。

「あやつこそ、バンパイアキラー!全軍をあげて、迎え討たねば!」

唾を飛ばしながら、興奮状態となった蛙男を、ライが制した。

「無駄だ」

ライの一言に、蛙男は震え上がり、跪いた。

「ははあ」

「もう……遅い」

ライは、目を開いた。

「あやつは、魔王としても、目覚め始めている。軍を率いても、あやつを倒すことはできぬ」

「そんなことは…」

狼狽える蛙男を無視して、ライは、前に控える騎士団長を見据え、

「しばし捨て置け!目下、注意すべきは、アルテミア」

「は!」

ライの言葉に、バイラ、サラ、ギラ、カイオウは頭を下げた。

少し遅れて、リンネが頭を下げた。


「王よ!」

カイオウが控えながら、一歩前に出た。

「何だ?」

ライは、カイオウを見た。

「人間は、どうなさいますか?」

「人か…」

「情報によりますと、こちらに総攻撃に、仕掛ける準備をしていると…」

「総攻撃?」

リンネが、笑った。

「だとすれば…先に、殲滅致しますか?」

サラの言葉に、ライはフッと笑い、

「一応、手は打っておる。まあ、どうなるかは…わからないが…」

「王よ」

リンネは、立ち上がった。

「私に…赤星浩一討伐の命を!」

真っ直ぐに、ライの目を見るリンネ。


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