天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「わかりました…」

頷いた僕は、ブラックカードを取出し……じっと見つめた。

ブラックカードだけじゃない。

もう一枚……この世界に来てから、アルテミアに渡されたカードもあった。

いろんな思い出があった。

最初は、海を渡ることもできなくって、ポイントを集める為に、バイトしたことや……ゴキブリを殺して、一ポイント貯めたこと…。

そのすべての苦労が…この世界で、生きる普通の人達の苦労なのだ。

「魔物と戦う為に、魔法を使えなくなった人々が、倒した魔物から、魔力を奪うのが、カードシステム。だけど…今は…人が生きる為ではなくなった」


僕は、ブラックカードを起動させ……カードシステムの管理塔である格納庫へと、一瞬でテレポートした。


眼下に広がる砂漠地帯。

地下に潜っている為、塔は見えない。

「だけど……僕が魔王に勝てなかったら、どうします?それに……この塔には、あなたの心臓があるんでしょ?」

カードシステムを運用する力は、もと安定者達や…力のあった者達の心臓だった。

そのことは…かつて、ブラックカードを持つ者だけが知り得る情報だった。


アルテミアと最後に会った時…あまりの悲しさに、アルテミアが塔を破壊しょうとした理由…だけど、破壊できなかった理由。

僕は、それを知りたかった。



「ここを破壊したら…あなたは生き返れない」

その言葉に、ティアナは軽く笑った。

「あたしの体は、ボロボロだった…。心臓を抜かれなくても…死んでいたわ。それなのに…」

ティアナは一旦、言葉を止め、

「あの子や、あの人は…未だに…気にしすぎている…。あたしの脱け殻まで使って……」


「脱け殻?」

その意味はまだ、僕にはわからなかった。


「その脱け殻も……ここも、破壊できるのは、あなただけなの……赤星浩一君」
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