天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「そうじゃ!そうじゃ!人々が、困っていると、必ず助けに来てくれる勇者赤星様じゃ!」

老夫婦は、天に向かって、祈る。

「お助けください!赤星様!」


やっと、アルテミアにも事情がわかった。

わなわなと肩を震わせ、アルテミアは拳を握り締めた。

「赤星が来るのか!た、助かった…」

アルテミアの後ろで、ほっと胸を撫で下ろすヤスベエに、アルテミアは振り向くと、

思い切り蹴り上げた。

ヤスベエは、サッカーボールのように、地平線の向こうへ飛んでいた。



アルテミアの怒りは、おさまらない。

翼を開け、飛び去ろうとするアルテミアの背中に向かって、マークは言った。

「逃げていく!赤星様が怖いんだあ!」



空に飛び上がったアルテミアに、僕は声をかけれなかった。

いや、かけたら殺される。

猛スピードで、飛んでいくアルテミアは、舌打ちした。

「赤星…」

低い声で、絞りだすように言ったアルテミアは、ピアスを摘みながら、

「今から、ライとこ行って…体取り戻してくるから…その後…」

アルテミアは、ピアスを摘む指先に、力を込め、

「あたしと勝負しろ!」



「ひぇぇ!」

アルテミアの怒りに、僕は震えた。

「こ、子供が言ったことだから……あまり、気にしない方が…」

何とかなだめようとする僕に、

「余裕だな?勇者様…」

アルテミアの返事が怖い。



「も、もお!」

僕は叫んだ。

「ライとこ行って、どうすんるだよ!何とか引き分けたけど…今度は、どうなるかわからないよ!まだ強くならないと!それに!」

僕も興奮してきた。

「それに…何だ?」

アルテミアは、空中で止まった。

「そ、それに……?」

僕は、自分が言おうとしたことに、口籠もった。

「男なら、さっさと言え!」

「それに、アルテミアに勝てる訳ないだろ!僕が!」

「それは…強さとは、関係ないだろ?」


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