天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
アルテミアは、襲い掛かる医師や看護師を、次々に倒していく。

「悪いのは、こいつらだ!」

トンファーを合体させ、槍にすると、一気に周りの敵を蹴散らす。

「あたし達は、過去を救えない!起こってしまった過去は!変えられるのは…」

アルテミアは、槍を脇に挟んだ。

「これから起こる…未来だけだ」

アルテミアの全身がスパークし、

地下室に満ちる空気が、風になり…槍に集まっていく。

「お、お前は、ここにいる人間を殺すつもりか!」

狼狽える医師を、アルテミアはせせら笑った。

「あたしは、人間を殺すんじゃない!未来を守るんだ!」


「ヒィィ!」

慌てて、逃げようとする医師や看護師達。

「アルテミアアアアア!」

それに混じって僕の声が、こだました。


しかし、アルテミアは技を発動させた。

女神の一撃。



地下室にいたすべての生物が、消し去られた。





アルテミアは、技の発動とともに、

天井を突き破り、

遥か上空に移動していた。

アルテミアの眼下に、電撃と竜巻によって、崩れ落ちる病院が見えた。



「どうして………支配された人達に、罪はないのに…」

僕は、ピアスの中から、瓦礫に変わる病院の姿を見、視線をそらした。

耐えられなかった。


アルテミアは冷静に、崩れ落ちるさまを見下ろしていた。

「どうして…どうしてだ!」

いたたまれなくなり、僕は叫んだ。

「赤星…」

そんな僕とは逆に、アルテミアの声は、落ち着いていた。

アルテミアは、病院の上空を後にする。

背中の白い翼を広げ、アルテミアは飛び立つ。


「あたし達は、今より未来を守らなければならない。その人に、罪がなくても…未来の多くの人達の平和を、守る為に…」


僕は、アルテミアの言葉に納得しながらも、許せなかった。


「なぜ、殺す必要があった!他に、他に手があったかもしれないだろ!」

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