天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「これはね…大発見ではあるが…人にとっては、喜ばしいことではない」

扉のわりに、部屋は狭かった。

何もない部屋の真ん中に、手術台があり、

その周りを数人の学者が、囲んでいた。

学者達は、ちらりと、沙知絵と中村を見た。

中村は、学者達に向かって頷くと、学者達も頷き、 

中村と沙知絵の為に、手術台から離れた。

そこに横たわるもの達。

中村は、沙知絵を促し、手術台に近づくことを進めた。

恐る恐る近づいた沙知絵は、妙な異臭に鼻と口をおおいながら、手術台の上を覗いた。

「!?」

そして、絶句した。

あまりの驚きに、臭いすら忘れた。


「フフフ…驚くだろ…。これは、作り物ではない」

中村は、沙知絵の横に立ち、怪しげな笑みを浮かべ、

「率直な意見が聞きたい。きみには、これが何に見えるかね?」

中村の質問に、あまりの衝撃で固まってしまった沙知絵は、口に張りついた手の隙間から、声を絞りだした。


「鬼…」


沙知絵の答えに、満足気に頷くと、

中村は手術台の前に行き、

「上野くん…。きみは、食物連鎖というものを考えたことがあるかい?」

中村は、手術台に横たわる物質を見下ろしながら、

「我々は、あらゆるものから、搾取する存在のはずだ…しかし、そうでなければ?」

中村は、手術台の端に手を置き、沙知絵に向かって、振り返ると、

「あらゆる生き物の頂点として、行き着いた人というもの…。それは、真実かな?」

冷たい手術台に、横たわるものは、

心臓の辺りが裂け…死んでいるようだが、圧倒的な存在感を醸し出していた。

筋肉の張りが、つき方が明らかに人を違うし、

額から突き出した角は、鹿などの動物とは違い、金属のように光り輝いていた。
その輝きに…角に映る自分を見て、沙知絵はさらに息を飲んだ。


< 829 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop